養育費

1 養育費とは

養育費とは、未成年の子どもの監護や教育のために必要な費用のことをいい、離婚に際し、未成年の子を引き取って監護する親(監護親)から、子どもを監護しない親(非監護親)に対して請求できる費用のことをいいます。

一般的には、子どもが経済的・社会的に自立するまでに要する費用を意味し、衣食住に必要な費用、教育費、及び医療費などがこれにあたります。

2 養育費を支払う期間

原則として、養育費の支払請求がなされた時から、子どもが20歳になるまでの間、養育費が支払われることとなります。

もっとも、現に子ども自身が働いて経済的に自立している、又は自立を期待できる場合は除かれることもありますし、両親の資力及び学歴等を考慮し、高等学校卒業後も高等教育を受けることが通常であると考えられる場合には、大学又は専門学校等を卒業する年齢までの期間について養育費の支払いを合意することもあります。この場合、例えば、「子どもが大学に進学した場合は22歳になる年度の3月末まで養育費を支払う」といった形で取り決めます。

3 養育費の相場

養育費は、協議離婚であれば父母の協議(話し合い)によって自由に決めることができますが、協議において合意に至らなかった場合には、家庭裁判所での調停や審判で定めることになります。

養育費を定める際には、裁判所が公開した「改定標準算定方式・算定表(令和元年版)」(以下「算定表」といいます。)が目安として広く利用されています

※平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について)。

算定表は、子どもの数(1人から3人まで)及び年齢(14歳以下と15歳以上)に応じて用意されており、これに父母の収入をあてはめることにより、義務者(非監護親)が権利者(監護親)に対して支払う養育費が算定できるようになっています。

調停や審判に至った場合には、原則として算定表に基づき、養育費を算定することになります。

もっとも、養育費は、個別具体的な事案に応じて決められるものですから,「算定表」が絶対的な基準というわけではなく、あくまで目安に過ぎません。家庭ごとに支出状況は異なるため(例えば、算定表は、子どもが公立学校に進学した場合を想定しているため、私立学校に進学した場合には、養育費が不足することになります。)、算出表のみを参考として養育費を決めるのではなく、父母それぞれの基礎収入、最低限必要な生活費、父母その負担能力の有無等を考慮し、十分に協議することが必要です。

4 養育費の支払方法

養育費は、1か月当たりの金額を定め、銀行振込による方法で月ごとに支払われることが通常です。銀行によっては、個人同士でも自動引き落としの設定が可能なこともあるため、振込に漏れが生じないように、同設定を利用する場合もあります。

5 養育費請求の流れ

(1)手続きの流れ

養育費については、協議離婚であれば父母の協議(話し合い)によって決定されることになります。

話し合いがまとまらなかった場合には、家庭裁判所に養育費請求調停(正式な名称は「子の監護に関する処分(養育費)調停」といいます。)又は離婚調停(離婚調停の申立てに伴って離婚後の養育費について話し合いたい場合)を申し立てることになります。

調停では、裁判官と最高裁判所から任命された民間人の男女からなる調停委員2名以上の合計3名以上が調停委員会を構成して、父母双方から話を聞き、父母それぞれの収入や最低生活費、負担能力の有無、子どもの数や年齢など様々な事情を考慮し、養育費の金額などについて提案や斡旋を行います。話がまとまれば、調停調書を作成し、養育費の支払いが行われることになります。調停は、裁判所を通じた手続ですが、あくまで話し合いの場なので、合意が成立しないときは不成立となります

養育費請求調停については、不成立となった場合には、自動的に審判手続きへ移行することになります(家事事件手続法272条4項)。

 審判の決定には、夫婦間の合意は必要なく、審判後2週間以内に当事者から即時抗告の申立てがなされなければ、その審判は執行力のある債務名義と同一の効力をもつことになります。他方、当事者から即時抗告の申立てがなされたときは、その審判は効力を失い、高等裁判所において審理されることになります。

(2)弁護士に依頼するメリット

調停を申し立てる際には、申立書の提出が必要であり、任意であるものの調停委員会から主張書面・証拠の提出が求められることが一般的です。その際に、主張書面をどのように書いたら良いのか、どのような証拠を提出したら良いのかが分からないことが多いと思います。

また、仕事が忙しいなどの理由で毎回調停期日に出席することが難しいということも多いと思います。

加えて、調停委員は当事者どちらの味方でもないため、なるべく争いを減らして調停をうまくまとめるために、当事者が気づいていない問題点にあえて触れないこともあります。

弁護士に依頼することで、ご自身で主張書面を書いたり、証拠を収集したりする負担が軽減されるだけでなく、毎回調停期日に出席しなければならないという時間的負担も軽減されることが期待できるほか、依頼者にとって最大限の主張を行うことが可能となりますので、早めに弁護士に相談することをお勧めします

6 養育費の増減額請求

一度、養育費について合意し、又は審判や裁判を得た後も、当事者双方の収入・生活状況に様々な事情の変化が起きることがあります。

一定の場合には、婚姻費用の増額請求又は減額請求を申し入れることができます。具体的には、子供が重病を患ったため高額な治療費が必要となった場合や、大学に進学して多額の費用が必要となった場合等には養育費の増額が認められる場合があります。反対に、権利者(監護親)の収入が増加した場合や、義務者(非監護親)が再婚し、再婚相手との間に新たに子をもうけた場合等には、養育費の減額が認められることがあります。

これらの場合には、当事者間の協議により養育費を変更することができることはもちろんですが、当事者で話し合っても合意に至らないときは、家庭裁判所に養育費の増額請求又は減額請求の調停を申立てることができます

ただし、調停でこの養育費の増減が認められるためには、事情に変更があっただけでは不十分で、「現在の扶養関係をそのまま維持することが当事者のいずれかに対してもはや相当でないと認められる程度に重要性を有する」ことが必要とされるなど、要件が厳しく設定されています(福岡高裁宮崎支部昭和56年3月10日判決)。したがって、最初に養育費を定めるときに十分注意する必要があります。

7 養育費が支払われなくなった場合

(1)強制執行

養育費は、通常長期に渡って分割して払われるものであるため、途中で支払われなくなることが往々にしてあります。

家庭裁判所における調停や審判において養育費の支払いを定めている場合には、家庭裁判所に申し立てることにより、家庭裁判所から相手方に対して養育費を支払うよう勧告(履行勧告)をしてもらうことや、支払をするよう命令(履行命令)を発してもらうことができます(家事事件手続法289条、290条)

もっとも、履行勧告や履行命令はあくまで裁判所から相手方に対し勧告・命令をするにとどまるものであり、履行命令の制裁も軽微なため、相手方が任意に支払いをしない場合には実効的なものではありません。

そのため、相手方が任意に支払わない場合には、調停調書、審判書、判決正本、和解調書等を債務名義として、地方裁判所に強制執行の申立てを行うことを検討します

強制執行とは、相手方が持っている財産(不動産、預貯金、自動車、給与債権等)を差し押さえる手続きをいいます。強制執行の対象としては、相手方の給与債権を差し押さえることが一般的です。通常の強制執行において給与債権を差し押さえる場合、給与の4分の1までしか差し押さえることができませんが、養育費の場合には、給与の2分の1までの差し押さえが認められています。

なお、協議により養育費を決定し、執行認諾文言付きの公正証書を作成している場合には、当該公正証書を債務名義として強制執行をすることが可能ですが、単なる合意等に過ぎない場合には、直ちに強制執行をすることはできず、改めて養育費請求調停を申し立てる必要があります。

(2)財産開示手続

相手方の財産の所在については、原則として自分で調べなければなりませんが、債務名義がある場合には、裁判所を通じた調査を行うことができます。

まず、財産開示手続を裁判所に申し立てます。財産開示手続とは、文字通り、債務者(養育費の支払義務を負う人)に、自らの財産の開示を命じる手続のことをいいます。債務者は、財産開示手続に出頭しなかったり、嘘を述べたりした場合、逮捕され、刑事罰を受けることがあります。

次に、第三者からの情報取得手続を行います。第三者からの情報取得手続とは、裁判所が金融機関や官公庁(法務局、市町村、年金事務所等)に対して、債務者の資産、収入に関わる情報を開示するように求める手続のことをいいます。

これにより、債務者の預貯金、不動産などの資産の情報、債務者の給与を差押えるのに必要な勤務先の情報を入手することができ、強制執行ができるようになります。