離婚慰謝料
1 慰謝料の法的性質
慰謝料とは、精神的苦痛に対する損害賠償金のことをいいます。
離婚給付としては、財産分与がありますが、慰謝料も財産分与と並ぶ離婚給付の1つです。
相手方が有責行為(不貞行為、暴力行為、悪意の遺棄、一方的な性交拒否など)によって夫婦関係(婚姻関係)を破綻させ、離婚に至った場合の慰謝料が、離婚慰謝料と呼ばれるものです。
不貞行為や暴力行為はそれ自体が不法行為にあたるため、離婚と無関係に慰謝料を請求することが可能です。しかし、不貞行為や暴力行為などを原因として離婚に至ったことは、精神的苦痛の大きさを測り慰謝料の金額を算定する上で重要な事実です。そのため、離婚した場合には、これらを総合して離婚慰謝料として請求することが一般的です。
2 慰謝料の基準
離婚の慰謝料は、①相手方の有責行為(不貞行為、暴力行為、悪意の遺棄、一方的な性交拒否など)の程度・回数・期間などの有責性の高さ、②請求する側の落ち度の有無といった事情のほか、③婚姻期間、④当事者の年齢、経済力、⑤未成熟子の有無、⑥財産分与の金額などの事情を総合考慮して決められます。
3 慰謝料の相場
裁判になった場合に認められる慰謝料の金額(認容額)については、一般的に100万円から300万円までの範囲で決まることが多いとされています。
不貞行為が離婚原因である場合、慰謝料は100万円から200万円程度、事情により300万円程度の間で認容されることが多いといえます。なお、婚姻関係破綻後の不貞行為の場合、婚姻共同生活の平和の維持という権利又は法的保護に値する利益があるとはいえないとして慰謝料が認められないことがあります。
暴力行為、悪意の遺棄、又は一方的な性交拒否が離婚原因である場合、有責行為の程度や離婚との直結度により、慰謝料は数十万円から300万円程度の間で認容されることが多いです。
4 消滅時効
離婚慰謝料の消滅時効は、判例上、離婚が成立したときから進行するとされています(最高裁昭和46年7月23日判決)。離婚成立後3年経過すると、慰謝料を請求する権利は時効により消滅します。
5 財産分与との関係
財産分与には、①清算的要素(夫婦の実質的な共有財産の清算)、②扶養的要素(離婚後の生活に困窮する配偶者に対する扶養)、③慰謝料的要素(離婚によって精神的な損害を被った配偶者に対する慰謝料)の3つの要素が含まれるとされています。
したがって、財産分与と慰謝料は相互に考慮されますが、財産分与の額や算定方法を考慮しても精神的苦痛を慰謝するには足りないと認められるときは、財産分与を得ていても個別に慰謝料を請求することができるとされています。
ただし、協議離婚の合意書や離婚調停の調停調書の中で、いわゆる清算条項、つまりお互いに債権債務が一切ないことを確認する旨の文言が入っているような場合には、後から慰謝料等を改めて請求することはできないことに注意が必要です。
財産分与や離婚慰謝料の請求を考えているときは、合意を成立させる前に弁護士に相談することをお勧めします。